母の介護にまつわるあれこれで、
心身ともにクタクタになっていた頃。
施設からの帰り道に
カーラジオから聞こえてきたニュースに耳を疑いました。

それはある県の県議のことを取り上げたものでした。

その人はとてもお金持ちにも関わらず、
実際には豪邸で同居していた親ごさんのために、
別にアパートを借りて、住民票を移し、
一人暮らしを偽装。
さらにその親御さんの生活保護認定も受けて、
特養に優先入居させていたと。

運転をしながら、気が遠くなるかと思いました。
実際にこんなことができるんだ。
する人がいるんだ。
まさか、と思っていたことが、
できるんだ、と。

たまたま、この県議の方は、
経済的に何不自由なかったので、
大きな問題になりました。
でも、基本的にこれは道義的な問題であって、
制度上は許されることだったんです。
許されないけどグレーゾーン いや 黒か。

あ、そうか、窓口の方が言ってたのは、
こういうことだったんだ!

そこでようやく気付いた私でした。
そして気付いたとしても、
動けない母のために部屋を借りて、
住民票を移し、その他の手続きをする
という余力はわが家にはありませんでした。

その後、本当にギリギリのタイミングで、
ありがたいことに、母の特養への入所が決まって、
老健から特養にお引越し。
特養に入所できたその日に、
住民票を特養に移すことができて、
即日生活保護の申請が受け入れられ、
所定の審査を経て、あっけないくらいにあっさり、
母の生活保護が認定されました。

「なんでここまで頑張っちゃったんですか?」私が聞きたい。
「ほんとうによくやってこられましたねぇ」 頑張りたかったわけではない。

役所の方、施設の方はそう言ってくださったけど、
正直もう少し早くなんとかしてほしかった。

でも、グレーな手段があるよ、なんて
役所の立場では言えなかったでしょうしねえ。

これより数年前、母が倒れた最初の段階、
まだ経済的にも少しは余力があったところで、
母のためにアパートを借りて、
独居にしたら、
もっともっと早く特養に入所できました。
生活保護も受けられたと思います。
精神的にも経済的にも、
あそこまで追い詰められることもなかったと思います。

そして、すっからかんになるまで吐き出したことで、
今度は私たちに何かあった時、
子どもたちが同じ思いをすることになりかねない、
という状況も生まれてしまいました。
これが俗にいう、貧困の連鎖ですよね。

本当に必要としている人に届けたいのに、
ほんの少し基準に適合しないだけで、
申請を断らなくちゃいけないという立場の
自治体や施設の職員の方も疲弊している。

不正利用を防ぐために制度を厳格に、複雑化していく方向は
もういいかげんでやめた方がいいんじゃないか。
どんなに厳しくしても、
正直者がばかを見る、ということが、
実際に起きているし、これからも起きるだろうから。

本当に困っている人、弱い人のために、
福祉職に就きたいという熱意を持って
仕事をされている方も含めて、
報われる世の中になって欲しいなあと思います。

昔語りにお付き合いありがとうございました。

今はいろいろなサービスを横断的に調べて、
一番合ったもの、また、早期にサービスが受けられるものなどを
一緒に考えてくれるNPOもチラホラと出てきました。
有料老人ホームへの入所を考えているなら、
さらに仕事として親切にやってくれる業者もあるようです。

まずは「本当に困っているんだ」ということを
できるだけたくさんの人に知ってもらうこと。
あまり知られたくないこともあるだろうけれど、
伝えなければ「何とかなってるんですね」と
誤解されてしまうので。

今、大変な思いをなさっている方には、
できるだけ早く手助けが受けられますように。
今より少しでも楽になりますように。

そして、嵐のような日々の後には、
これはがんばったご褒美かな? という時間もきます。
きっと来ますから。