子どもが幼い頃から続けてきたことを
「やめたい」と言い出したとき、
実は親の葛藤、こだわりをクリアすることが
とても難しい場合が多いです。

数年前になりますが、
ちょうど小学校から中学に上がる段階で、
息子さんから
幼児から続けてきたスポーツをやめたいと言われて
動揺している、というお母さんから
相談を受けました。

息子は中学でまったく別の部活がやりたいと言っている、
このままやめさせてもいいんでしょうか? とのことでした。

せっかく長く続けてきたのに、
これから中学になって、
全国大会なども始まり、
活躍を楽しみにしていたのに。
親から見たら、まだまだやれる、と
思っていたのに。

そして一番の未練は、
親御さん同士のコミュニティから
自分が離れてしまうことへの寂しさだったかも。

思えば、トイレにも一人で行けないような時期から、
コーチがお話ししていても、砂遊びしている子もいた
順番が守れない子もいた
練習のたびに泣いてる子もいた
そんな子どもたちがどんどん成長して、
一人前に試合に負けて悔しがったり、
友だちとのレギュラー争いで選ばれなかった悔しさ、
友だちを差し置いて選ばれた複雑な気持ちも経験。
その一つひとつを、「みんなうちの子みたい」な
気持ちで見守ってきたあたたかな親同士のコミュニティ。

試合後の打ち上げと称した呑み会でも、
「あの子は毎回泣いてたのに」
「あの子は練習後のアイス(のご褒美)につられて来てたんだよね」
「コーチの話なんか聞かずに、勝手なことばっかりしてたよね」
なんて、共通の思い出、共に見守ってきた成長が話題になる。

親として感じるわが子の成長が、
何人分も実感できて、
何倍にも増幅されたような、
とても濃密な時間と空間。

子どものいっときの迷いで、
本当に「やめてもいいよ」と言ってもいいのか。
一度やめたらもう戻れないのに・・・・・・。

私はそのお母さんに、

子どもの判断を信じてあげて

と言いました。

小学校6年生にもなれば、
子どもは子どもなりにいろいろなことを考えます。
もっと違うことに挑戦してみたい
あのチームとはすこし距離を置きたい
あのスポーツとは少し離れたい

「嫌なことから逃げようとしているんじゃない?」
「中途半端でやめたら後から後悔するんじゃない?」
「せっかくできた仲間から外されてしまうんじゃない?」

そんな親御さんの心配もわからなくはありませんが、
本人は本人なりに、考えた結論を伝えているのです。

大人の理屈と不安から、
「本当にいいの?」「大丈夫なの?」「後悔するよ」と
マイナス要素をあげつらって引き留めるのではなく、
そう決めた本人の気持ちをしっかり聞いてあげて、
認めてあげて欲しい。

もしそれで「あ、思ってたのと違った!」
「これじゃなかった」と思ったら、
また次のチャレンジをしてもいいし、
「戻る」という選択だってあるはず。

だから今は
子どもの判断を信じてあげたら?

そう言うと、
そのお母さんの瞳にわーっと涙が溢れて、
「そうですね」と。
「実は一番さみしいのは私かもしれません。
あのパパママ仲間から離れたくないんです」と。

最近、そのお母さんと偶然お目にかかる機会がありました。

その後、お子さんは?と聞いたら
「ありがとうございます。元気にやっています。
中学から始めたスポーツに楽しく取り組んで、
早いものでもう卒業ですよ」と。

子どもは子どもなりに考えている、と書きましたが、
その中には
「パパやママが残念がるだろうな」という
親に対する思いもちゃんと含まれています。
それも含めて「違う道」と言うのです。

お子さんが進む道は、
親の人生ではありません。
たとえ後悔しても、
それは本人が引き受けること。
そのぐらい突き放した気持ちで、
子どもが生きる、子どもの人生を
認めてあげてもいいんじゃないでしょうか。