お友だちがFacebook上で紹介していた一冊の本。
内戦が終わって、少し落ち着いてきた2000年代のカンボジアが舞台。
まだまだたくさんの地雷が埋まっていて、
地方には学校がほとんどなく、
幼い子どもが性の奴隷として売り買いされるのが日常で、
元・クメールルージュの武器が当たり前に保管されていた時代のお話。

船戸与一さんの「夢は荒れ地を」

それでもわずか20年前のこと。たった20年。

小説だから、全部が全部本当ではないにしても、
きっとそういうことはたくさんあったんじゃないか、
そう思わせるようなエピソードの数々。

文庫にして700ページを超える長編ですが、
一気に読みました。

粘りつくような暑さのこと、
地方の高床式のおうちのこと、
舗装されていない赤土の道、
鶏と香草のスープ、
たった10日間しかいなかったのに、
なんだかもう懐かしくて、
その場にいるような不思議な感覚のまま、
物語の勢いと共に、読み進めていきました。

そして、私の認識の甘さ、未熟さも痛感した。
どんな教科書よりも、カンボジアという国の背景が
よくわかりました。

巻末には資料となった本が何冊か紹介されていたので、
これらもまた読んでみたい。そう思っています。

10年近く通い、大好きになったタイ、
そのタイの人たちが、侵略し、
今も政治的に、経済的に利用しているカンボジア、
ベトナムとの関係、確執。

激しい内戦は、欧米やソ連からの支援がなければ
起こりえなかった。
カンボジアだけでは、
ピストル一つ作れないし、買えない。
そんなベトナムに数えきれないほどの地雷が埋まっていた。
誰が、何の目的で、というのも複雑にからみあっている。

自分の信条とか、守るべきものとか、
自分が会えないくらい未来の子どもたちとか、
そういうものに対して、本気で何かをしようとしたら、
こういうことになるんだなぁ、その覚悟は私にはない。
安全なところから、傷つかない程度につぶやいているだけ。

そんなことも考えました。

カンボジアに行ったことがなかったら、
そしてお友だちが紹介してくれなかったら、
絶対に手にとらなかった一冊。

すごくおもしろかった。
あじさいさん、ありがとう!

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